法定後見人制度への質問② どこまでやってくれるの? 

くらし

 包括支援センターのご厚意で、ケアマネジャーさんに向けた成年後見制度の講習をさせていただきました。ケアマネさんからいただいた質問事項を、いくつかご紹介して解説したいと思います。

質問② 後見人はどこまでやってくれるのですか?

 後見人にできることは、民法に規定されています。それが全てです。

 後見人の仕事のなかに「身上監護」が含まれているのが混乱のもとではないかと思いますが、「身上監護」は「身体介護」とは違います。条文上に明確な定義がないのですが、「身上監護」は療養看護などの事務を行うことと考えられます(民法858条)。おそらく、どのサイトにもこのように書かれているのではないかと思います。

 ただ、そうすると、「事務」とは何かが問題となってきます。民法には「事務管理」という規定があり、事務の内容は法律行為か事実行為か、はたまた継続的か単発的かを問わない、という古い判例が通説化しています。そうすると、さらに「事実行為」とは何かが問題となりますが、意思表示がなくとも法律効果を発生させる行為、と考えるのが通説です。すると次には、「事実行為」か、あるいは一つの「事実(要件事実)」か、ということも問題になりそうです。
 この点、法務省は「食事の世話や実際の介護などは、“一般に” 成年後見人等の職務ではない」としています。

 もっとも、この質問の本質は、このような解釈論ではないと考えます。

 後見人がついて介護保険や健康保険のサービスが提供されれば、人の生活から生じるニーズを全て満たせるわけではありません。サービスの隙間が生じてしまったときに、誰がどのように埋めればいいのですか、ということがこの質問の本質であるように感じます。

 とくに、介護施設に入所していない場合は、このような隙間が生じやすくなります。資力がなければサービスは使えませんし、資力があったとしても対応できるサービスや人がいないことも多々あります。どうしても対応する必要がある場合には、後見人であれ、介護サービス関係者であれ、誰かがボランティアを引き受けざるを得ません。それがなければ、生活が立ち行かなくなるからです。そして現状では、事実上その方の日常を一番よく知っている、介護サービスの方々の献身により維持できていることも少なくないと感じます。

 サービスの隙間をどうやって埋めるかは難しい問題で、明確な解答が導き出せるものではありません。しかし、まったく対策が立てられない、というわけではないかもしれません。

 例えば、サービスの隙間が生じることを前提に、予め後見人とケアマネさんとでシミュレーションを行い、ケアプランに工夫をこらしておくという方法もあると思います。
 また、民法は私的自治の考え方のもとに事務管理規定をおいていますが、私的自治が困難となった方へのボランティアに、これをそのまま適用することが酷な場合もあるのではないかとも思います。安心してボランティアができるような法的な環境整備に、後見人が努める必要もあるかもしれません。

 いずれにしても、後見人と(介護・医療関係者の連絡役である)ケアマネさんとで、お互いに出来ないことを補い合うようなタッグを組んで、できる限り事前に隙間を洗い出しておくことが大切なのではないでしょうか。

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