喧嘩が増えたら、要注意?

くらし

 認知症かどうかを判断する場合、ほとんどの方が「もの忘れ」の有無を気にするのではないかと思います。政府広報オンラインでも、認知症の始まりのサインとして、そのように紹介されています。
 このため、ご自分が認知症にならないか気になるお年頃のかたは、ご自分のもの忘れに、非常に敏感です(もっとも認知症の場合は、もの忘れしたことも忘れてしまうのですが。)。

 しかし、そもそも加齢による認知症が問題になるのは、認知症になると社会生活が難しくなり、さらには日常生活も営めない可能性が高くなるからです。

 そうだとするならば、もの忘れの他にも、社会生活や日常生活に支障が生じるような加齢に伴うサインがあるのならば、これにも注意する必要がある、といえます。

その一つが、「人格の先鋭化」です。

 以前は、高齢になると、頑固で自分中心的で、内向的で用心深い性格に変化すると言われていました。また、自分の体のことをあれこれと気にして(心気的)、うつうつとなりやすく(うつ的)、ものごとを否定的に考えやすいなど、マイナス思考になるといわれています。
 しかし、これは加齢による変化ではない、と考えるのが現在の主流です。理性によって抑えていた本来の性格が、高齢にともなう脳機能の低下によって、抑えきれずに目立ってきたものと考えるのです。これを「人格の先鋭化」といいます。

 「人格の先鋭化」が認知症に含まれるかどうかは、学説が分かれるようですが、たいせつなポイントは、日常生活に支障が生じるかどうか、という点だと思います。「人格の先鋭化」により支障が生じているようであれば、認知症と判断される可能性も高いと考えられます。

 ご高齢の参加者が多い会議に参加すると、性別にかかわらず、以下のような方をお見かけすることがあります。

・ 会議のテーマとは、違う話をおし進める方
・ ほかの参加者の意見を、ほぼ否定する方
・ ほかの参加者と議論をすると、感情的になってしまう方
・ 根拠がないことでも、いいつのる方

 なかには、会議中に参加者同士で言い争いが始まってしまい、他の参加者の方が帰ったあとも、まだ続けている方もいらっしゃいました。知らない参加者がいて緊張感の高い会議でも見られるのですから、このような方がご自宅に帰られたときには、同じような場面が、さらに頻繁に見られるのではないでしょうか。おそらく、ご自宅でも、

・ 家族との会話がかみ合わない。
・ 家族との会話がないか、会話を嫌がられる
・ 家族と話すと喧嘩になってしまうことがよくある。
・ こどもや孫が寄りつかない。

 などを感じる機会が増えているのではないかと思います。つまり、家庭内での孤立化です。
 そうだとするならば、家庭内で味方がいないと感じるようになったら、「私はまちがえていない」「相手がわるい」などと決めつけてしまうまえに、一呼吸して、「脳の機能が落ちたのかも」と注意したほうがよいかもしれません。

 加齢による障害は、他の方からはとても指摘しにくいものです。会議にその様な方が出席されていても、他の方は争いになるのを避けるため、口をつぐんでしまったり、話を合わせたりしてお茶をにごすことが、ほとんどです。その方になんらかの肩書きがある場合は、なおさらです。家庭内で居心地が悪くなった。子供が電話をかけて来なくなった。くらしの中で、このような違和感を抱かれるようになったら、いちど脳機能の低下を疑ってみると、よいのかもしれません。
 ご自分でも気づけるサインは、もの忘れだけではないのです。

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