セミナーでダントツにキャッチーなデータ

くらし

ある包括支援センターのご好意で、安心できて使いやすい「見守り」サービスが創れないか、一緒に試行錯誤をしています。広くご意見をうかがうために、セミナー講師として公民館などでお話をしたりするのですが、その中で必ず注目を集めるフレーズがあります。少し長いですが、引用してみます。

「男性の平均年齢は81.05歳、女性の平均年齢は87.09歳です。その時点での認知症発症率は、男性が2割、女性が5割弱程度です。そこから5年長生きすると、男性の3割強、女性の6割が認知症を発症します。さらに5年長生きすると、男性は4割程度であまり変わりませんが、女性の8割が認知症を発症することになります。」

このフレーズは、とくに女性の方に衝撃的だったようで、耳にしたとたんに、エーッという声とともに顔がひきつったり、あからさまに不審げな顔をする方が多く見受けられました。そのあと、包括支援センターからも連絡があり、その話が本当ならば根拠を提示せよ、というご要望が寄せられたようです。

びっくりされるのも無理はない、ショッキングなデータですよね。平均寿命を迎えることができたら、ちょっとしたお祝いでもしたいぐらいの気持ちになると思うのですが、そのときには認知症になっている可能性が少なくないという…

しかし、残念ながら、そのようなデータがあります。論文そのものよりグラフのほうが分かりやすいと思いますので、ここに添附します。ただ、これは現在も継続中の研究ですから、今後社会の変化に合わせて、このデータも変わるかもしれません。

https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000519620.pdf(厚生労働省ホームページ)


もっとも、話に興味をもっていただくためのネタとして多少の誇張はあり、データには軽度認知障害(MCI)が含まれています。ただ、多くの場合、だんだん理解力や判断力が低下した結果として、生活に支障をきたしていると認定される(つまり、認知症)のが通常ですから、とくに女性の方は、平均年齢を迎える前から、何らかの意思決定支援を受けられる環境があったほうが安心といえそうです。ちなみに、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を健康寿命といい、健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳(令和元年時点)です。

誤解をしていただきたくないのですが、軽度認知障害あるいは認知症になったからといって、ただちに家で日常生活が送れなくなるわけではありません。しかし、上記のようなデータから考えると、身近に頼れる子供がいて何らかの意思決定支援を受けられるかどうかは、詐欺などの犯罪被害を免れることはもちろん、質の高い平穏な日常生活を維持するうえで、大きな違いを生じさせる可能性があるのではないでしょうか。

では、身近にそのような人がいない場合、代わりになるサービスがあるでしょうか。もしかしたら、ケアマネさんがその役割をになっていると言えるかもしれません。しかし、意思決定支援はケアマネさんの本来の仕事ではありませんし、そもそも介護保険を利用していなければ、ケアマネさんに相談することもできません。

かろうじて、いわゆる「見守り」サービスが、その代わりになるのではないか、と思いますが、「見守り」の内容をどう決めるかは自由ですから、トラブルも多くなってきているようです。後見人制度の利用以前の、安心できて使いやすい「見守り」サービスを作ることは、これからの社会に必要なことなのではないかと思います。

(蛇足ですが、個人的に「見守り」という名称は好きではありません。個人顧問契約で良いのではないか、と考えます。)

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