一人暮らしや夫婦だけの生活を続けていると、ふと、猫を飼いたくなる時があるのではないでしょうか。とくに、歳を重ねて外出の機会が減ると、そう思うことが増えるかもしれません。猫に限らず、動物がいてくれると、本当に癒やされることがありますよね。
でも、人が歳を重ねてから猫を飼う場合、いろいろと心づもりしておかなければいけないことがあります。とりわけ、今までペットを飼ったことがない方には、事前に知っておかれたほうが良さそうなことがあります。
そこで、猫の問題に最前線で取り組む、動物愛護センターの方に直接お伺いしたうえで、
一 飼う前に、考えなければいけないこと。
二 飼える? 飼えない? 決める前に知っておくとよいこと。
三 買うときに、気をつけなければいけないこと。
四 飼い始めたら、必ずしなければいけないこと。
をまとめてみました。
この記事が、猫と気持ちいい時間を過ごすためのご参考になれば幸いです。
(この記事は、四部構成のうちの四番目の記事です。「定年後、老後のお伴に猫を飼う。場合の注意③」の続きです。お読みになっていない方は、まずこちらからお読みください。)
四 飼い始めたら、必ずしなければいけないこと。
1 首輪や迷子札の装着とマイクロチップの登録情報の変更をする。
令和4年からは、犬や猫を販売するお店やブリーダーには、マイクロチップを装着することが義務化されました。そこで、これ以降に購入する場合や、これ以降に販売された猫を購入する際には、以前のマイクロチップの情報を変更する必要があります。
また、はぐれても飼い主がすぐにわかるよう、首輪と迷子札を装着しておくと良いでしょう。
詳しいことをお知りになりたいは、こちらの環境省のサイトをご覧ください。
環境省_犬と猫のマイクロチップ情報登録について [動物の愛護と適切な管理] (env.go.jp)
2 不妊・去勢手術をする。
猫は、年に2~4回出産し、1回で4~8匹の子猫を産みます。そして、子猫は生後4~12ヶ月で思春期を迎えて子供を産めるようになります。したがって、飼育崩壊を防ぐために、不妊・去勢手術は必須です。
また、不妊・去勢手術には他にも、引き取り手が見つかりやすくなることや、病気リスクが下がり、それに伴って飼育コストも下がるなどのメリットもあります。手術料は、オスで1~2万円、メスで2~3万円程度のところが多いようです。
注意しなければいけないのは、ノラ猫を外猫としてかわいがっているような場合です。
外猫の場合でも、継続して餌を与えた人に対しては損害賠償請求ができるとした下級審判例があり、今後この扱いが変わる可能性は少ないように思われます。ご近所の方から、おしっこやうんちの臭いなどの責任を問われることを防ぐためにも、不妊・去勢手術を実施することをお勧めします。
病院によっては、野良猫基金の利用などにより、野良猫の場合に割安な特別料金を設定するところもあるようです。また、自治体によっては、補助金を交付してくれるところもあります。前述のように、不妊・去勢手術は、猫にとっても病気リスクが下がるメリットがありますから、積極的な施術をお勧め致します。
なお、捕獲器を貸してくれる自治体もあるようです。これも合わせてご相談するとよいのではないでしょうか。
3 動物愛護団体(登録団体)へ事前に相談する。
何らかの事情で飼えなくなってしまったときのために、事前に動物愛護団体に相談して、対策を立てておくことが大切です。それぞれの都道府県の条件を満たした動物愛護団体は、自治体のホームページでも掲載されているので、ここで飼い主が相談しやすい団体を探すことができます。団体によっては、引き取りのための積み立て制度などを採用するところもあるようです。
また、老犬・老猫ホームの利用も考えられます。大きなところもありますが、大半は小規模な個人事業などによるため、事前にきちんと相談をすることがお勧めです。
なお、何かあったらご家族やお友達にお願いできるから大丈夫、という方も多いと思います。しかし、飼い主と同世代のお友達ではあまり意味がありませんし、ご家族の状況もどう変わるか予想ができません。近くに頼りになりそうな方がいる場合でも、このような団体への相談をしておくことが、大切なペットの幸せにつながると思います。
4 脱走防止対策をする。
猫の室内飼いについては、賛否それぞれの意見があるようですが、飼い主が管理しなければいけないという点では、室内飼いのほうが確実といえます。きちんと管理できるのであれば、家の外で飼ってもいいと思うのですが、おそらくこういうのは室内飼いに含まれますよね…
対策としては、窓や網戸のロックをかけることが考えられます。また、柵を取り付けるほどではなくとも、ドアのない玄関に面した部屋で飼わないなどの工夫をしていただくと良いと思います。
室内飼いだと猫のストレスが心配という方は、室内環境の整備に努めていただくと良いのではないでしょうか。
なお、室内飼いの場合にも、不妊・去勢手術は必要です。猫のストレスが軽くなり、外で鳴き声がしても、落ち着いて暮らせるようになります。
5 病院代などの積み立てをする。
ペットを飼う場合、餌代などの毎月の経費の他に治療代が必要となることもあります。保険がききませんから、入院代で10万以上経費がかかることも珍しくありません。年金生活をしている方にとっては、突然の予想外の出費に困惑する場合もあると思います。
また、飼い主の死後の対応を施設に依頼する場合にも、それなりの経費を準備する必要があります。
いざ、という場合に備えて、少しずつでも猫貯金をしておくことをお勧めします。
6 遺言を書く。
とくに、お一人のみ、あるいはご夫婦のみで生活されている方は、ペットのことを遺言にきちんと書いておく必要があります。遺言がない場合、飼い主が亡くなった後の処理は、法律に従って行われることになります。これを、法定相続といいます。法定相続では、どんなにかわいがっていたペットでも、モノとして扱われることになってしまいます。これを避けるためには、信託などの方法もありますが、遺言を書くことがもっとも確実です。遺言は、自分の思いを未来につなげる、一番の方法なのです。
そして、遺言には、遺言を実現してくれる人(遺言執行者)も書いておかなくてはいけません。自分に代わって、遺言を実現してくれる人がいなければ、遺言の内容も変えられてしまう可能性があるからです。
7 まとめ
いかがでしょうか。他にも、防災対策などがありますが、とくに重要性が高いものをあげてみました。
おおざっぱにまとめてしまえば、飼い始める前から、お別れが来たときの準備をしておきましょう、ということになります。
同じ生き物どうしですから、いつか必ずお別れのときがきます。お互いの幸せのために、備えておくことが大切ですね。