法定後見人制度への質問① デメリットは?

くらし

 包括支援センターのご厚意で、ケアマネジャーさんに向けた成年後見制度の講習をさせていただきました。ケアマネさんからいただいた質問事項を、いくつかご紹介して解説したいと思います。

質問① 後見人制度のデメリットや注意点は何ですか?

 私が考えるのは、以下のようなものです。

1 報酬の支払いが必要となります(救済制度が使える場合もあります。)。

2 ご家族が後見人になっても、家庭裁判所への報告義務があり、また後見監督人が選任されることが
 あります。従って、ご家族やご親族間でも、生活費などのお金の融通をきかせることが難しくなりま 
 す。

3 被後見人が死亡した場合、死亡後の対応は民法で定められた範囲で、後見人の判断により行われま
 す。生前の被後見人の意向や相続人の希望が反映されるとは限りません。

4 後見人は、家庭裁判所により選任されます。選任された後見人の個性により被後見人の生活の質が 
 変わる可能性があります。

 1、2、3については、よく指摘されていることなので、4について少し補足をしたいと思います。

 後見人には、被後見人本人の意向を大切にすることが義務付けられています。しかし、これがなかなか難しいのです。後見人が必要な方は、当然一般的な判断能力を欠く状態にあり、その多くは介護が必要な状態にあります。従って、本人の意向に沿っているだけでは、生活が成り立たなくなってしまうという場合も生じるからです。このバランスをどのようにとるかは、後見人の人生観や職業観などによって、大きく異なることになります。後見人の個性が、本人の生活に大きく影響するわけです。

 入所介護施設の相談員として、複数のケースに対応をしましたが、介護職員が頑張ろうとしている一方で、後見人が病院に入院させてしてしまい、向精神薬などが十分に効いたところで改めて他の介護施設に入所させるなどといったケースも目にしたことがありました。どちらの選択が本人にとっての幸福だったのかは分かりませんが、後見人の判断が本人の生活の質に大きな影響を生じさせたのは確かでしょう。

 このように、後見人の判断次第で先行きが変わってしまう不安を、少しでも減らそうとする工夫の一つが、任意後見人制度です。任意後見人の場合は、本人がきちんと判断して納得したうえで後見人を選びますから、選べない法定後見人の場合よりも、本人が納得しやすい結果に結びつき易いような気がします。

 すすんで後見人のお世話になりたいと考える方は、あまりいないと思います。しかし、80代では2分の1から3分の1の人が認知症にかかるとされています。保険として、任意後見人を選んでおくことが普通になる世の中がくるかもしれません。

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